「住みながら」
40年前の写真は、なんだかとてもいい写真で、僕にとっては宝物のような写真。そして見るたびに、家っていうのはやはり素敵だなって思う。父も母も、おじいちゃん、おばあちゃんも若い。
これからの日々を未来から思うなんて反則かもしれないけど、この家に住みながら思い出が作られた。2階の父母のリビングには、パインの木で作られたゆったりした安楽椅子が置かれていた。帆布のクッションに深く座り、窓辺に置かれたオーディオに電源を入れ、大きな窓から見える空を見ながら音楽を楽しんだり、そんなのんびりした土曜日の午後のリビングのことは、今でも思い出しただけでもほっこりする。
キッチンは朝日が眩しいぐらいで、夏場は簾を出し日をよけ、まな板の上で切る胡瓜やトマトは水水しくキラキラしていた。
日曜日には毎朝父とキャッチボールをし、庭の周りはススキ林で、かっこうの遊び場だった。
おじいちゃんは、とにかく植物を育てるのが好きな人で、そこらじゅうに鉢植えの草花があって、おじいちゃんというのはそういうもんだと思っていた。
庭は、家族の成長とともに、自由に変わり続けた。
一時期、藤棚があったらしいのだけど、それだけは母も本当に素晴らしかったと言っている。
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