はやく座面の革ばりが、出来上がってこないかな〜と待ちこがれている。新作の椅子に合わせた座の部分で、それ以外の本体はとうに完成し、毎日眺めている。座のない状態のこの椅子を見て、「この椅子すごくいい」と言ってくれた人は、同じように家具作りをしている人が不思議と多い。
新作といっても急に真新しいものが出来る訳でもないし、新しさを追求している物作りとも違う。
僕本人としては、家具作りの魅力の部分が変わっていない以上、生み出す家具も大きくは変わらないと思っている。
現にアイデアスケッチは10年以上前に描いてて、全部はつながっている訳だし。
僕は家具が好きである。有名無名などまったく関係ない。むしろ、その物の質感やディテール、使いごこちや使われ方など、家具としてどうなのかを見ている。比較的、そのへんは純粋に見ていると思う。
悩みに悩んである構造に行きつき成り立った形のものと、同じような構成の物を見ると、その作り手と自然と会話ができたような錯覚におちいる時もある。実際、悩んでいる部分は同じなんであろう。
何かを考える際、構造という部分が先立つのは、僕が職人であるからであり、構造からの視点での技術ベースタイプの物作りであるのは致し方ない。それが僕の家具作りである以上、それは持ち味なんだろうとも思っている。
10年前の僕では、あのスケッチを現実の物にする術はなく、時間が過ぎ、今は作れるというだけの事である。
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