hwb work diary 2004.10


10/29 現場での取り付け
先日の現場。
テレビ台を取り付けている僕をお客さんが2階から撮影したもの。まったく気がついていない僕だ。
取り付けは、カツキと2人で行った。この時、カツキは道具を取りに外へ出ていたんだろうな。たぶん。

この時、ソウタは工房にてキッチンカウンターの棚口ザンの構造を悩んでいた頃だろう。

この時ケイコは納品の帰り道、岡崎市から名古屋の現場へ。
テレビ台の下部に貼るべく布のサンプルを届け、お店に戻る。

とにかく忙しいので、みんな精一杯がんばってくれている。
ありがとう。歌って踊れる職人に憧れているが、いかんせん、仕事中は黙々と無口になってしまう僕なので、こんな場でしか言えないけど、、。

楽しい正月を迎えるために、がんばるのだ。


10/28 木天板のキッチン
ナラ材の天板のキッチンだ。重たいなあ、、、。シンクはステンレスで板金したものをテン板のアンダーに取り付ける。上にかぶせると、水が浸透しにくくなるが、入った水も出にくくなるので、アンダーシンクにし、さらに工夫を施す。
キッチンの天板に木を使う事は、僕自身は抵抗ない。言い方が控えめなのは、その良さを理解している人にしかお薦めできないからである。
汚れやすいから、キズつきやすいから、、、。いろんな意味でステンレスや大理石のようなタフさは劣る。が、平気な人にはまったくもって気にならない。もちろん、無垢材での話ではあるが、比較的容易に「削る事ができる」、というメリットもある。

僕らが使う手道具のカンナは木製である。それこそ温度や湿度の影響を受け、木製の台は常に変化している。
台が平らでなければ、仕事には使えない。紙1枚よりうすいカンナくずを出しながら、繊細に削り合わせたりするには、それなりの調子のいい台でないと削れない。常に変化するカンナ台を平らに保つ事などできないので、カンナ台を削る専用のカンナがあるくらいだ。
ものすごく繊細な道具である。木製だから、コンディションによって台を削り、調節できる。
ナル程、鉄のかんなでは仕事にならんわ。心底そう思う。

キッチンの天板の話しに戻る。メンテナンスをして一枚めくると綺麗になるから良いという事を言いたい訳ではない。
アンティークの家具を思い出してもらいたい。汚れていたり、キズがあったり、割れていたりするが、それこそが魅力だと思う。
使い込んで自然にできたそれらは、けして工房では作る事のできない風格がある。だからこそ、僕らは綺麗にきちんと家具を作る。良くできた道具は大事にしてもらえるような気がするからだ。愛着を持って、使ってもらうためだ。その愛着さえ持ってもらえれば、木は永く付き合える素材になると信じている。
どんな素材も使う事が前提ならば、新品の状態だけで判断するよりも、その経年変化にも注目した方が、楽しく付き合えると僕は思う。
おもしろい。
そう言えば、僕は古っぽく加工をされたジーパンを買った事がない。損をした気分だからかなあ。古着のジーパンの雰囲気は好きだけど、、。
「こんな風に生活したいなあ〜」とお客さんの家具を作るたびに思う。
僕は「家具好きで、部屋好きで、そういうのひっくるめて人の生活という物が好きなんだなあ」と我ながら思う。
僕らの作る家具は、どんな部屋に合うのだろう、、、。実はかなり柔軟だったりして。だぶんそう。



10/27 現場での取り付け
現場というと何か大げさに感じる。現場を作る訳ではないが、床に固定したり壁に取り付けたりしなくてはならない家具も中にはあるので、現場で家具屋の仕事をする。
基本的に僕らの作る家具は、いわゆる造作家具とは違い、作りも素材も特殊である。だから、工夫と技術も必要である。
パターンはない。建築業をしているつもりはないが、建築の中に入る家具なので、現場仕事もある。

今の日本での建築業と密接に関係した造作家具屋のあり方と出来上がる物の質を考えると疑問を感じる事はいろいろあるが、今日の現場であった家具屋さんは感じが良かった。僕らの作った家具にも仕事にも好意的で、同じ空間で仕事をしていて気持ちが良かった。
職人は常に一生懸命だよね。手を動かし作る。その技術で食べてる。余計な策略もないし、シンプルだ。この職人に作ってもらいたいという気持ちわかるかなあ〜? 「作る」っていう事は出来上がる物も違うっていう事だよね。少なくとも、僕らが作る家具はその違いは出るし、逆に使い手のお客さんによっても、出来上がる雰囲気も変わる。箱一つ作るにも努力しているんだよね。

画像はテレビ台を取り付けているところだ。
3400mmのテレビ台は、空間を想像し、ソファに座った時を想像し、テレビを見にいった電機屋さんで想像し、出来上がったものである。ウーハ−を本体の下部に収納し、下部前面はソファ用の布を貼る。麻とまではいかないが、素材感のある布をお客さんといっしょに選んでいった。
本体は、前に倒れる扉(2ケ)と引出し(2ケ)となる。奥壁面と設置する部分は木ルーバーとなり、機材の熱を逃がす。内部の熱も循環させるために、本体底板にはパンチングメタルを(画像はついていない)。いい物ができそうである。



10/26 親しむ
1550サイズのデスクである。完成してから3週間ぐらいたって随分オイルも落ち着いた。完全に乾いた木肌にワックスを塗り込む事となる。ワックスの定着がよく、効果も高い。Fさんの家はもうすぐ完成する。という事は、このデスクもベッドもソファもテーブルもドレッサーも納品していく事となり、お店に保管していた状況になれ親しんだ僕としては、少し寂しいところである。

打ち合わせをし、家具を提案し、そして製作し、納品する。かけた分の時間だけ、自信を持って納品ができる。
明日は、現場で取り付けが必要なテレビ台と建具を納品する。もちろん、取り付けもやる。



10/25 地震
新潟で震災。
ニュースレベルでしか、把握する事しかできない。僕も作り手の端くれなので、しっかり作り上げた物の丈夫さは信じたいが、自然の大きな力には、かなわない事もわかってはいる。
自然と共存するにはどうしたらいいんだろう。ただただ強固に作ってもダメだろうし、力を流す柔軟さも必要だろうし、、、。
木工人としては、その柔軟さの方に可能性を感じるが。



10/19 一期一会
今年は台風が多い。明日接近するらしく、嫌な気分である。
そういえば、地震も頻繁におきている。名古屋地区では「東海大地震がもうすぐおきるぞ」「いつきてもおかしくないぞ」と言われ続けている。
なんか嫌な気分であるね。

工房では忙しく仕事をさせてもらっている。ここ数週間、休む事なく家具製作をしている。
ただただ家具を待っている人の事を思うだけであり、特にそれ以外の理由はない。
僕らの家具作りに共感して頂いて、注文頂ける事については、本当にうれしい事である。
職人として求められ家具を作らせてもらう事について、もちろん感謝している。ただその前に、僕らの物作りに共感してもらえる事が単純にうれしいのである。「そうそう、こういう家具が欲しかったんだよ」「どれだけ、探した事か、、」「何か違う、この違いを求めていた」
など共感して頂ける方には、当たり前だがピッタリ思ってくれる。もちろん、家具を探している人の中のほんの一部の数であろうが。
とにかく、そうして共感して頂いている方は、大事にしたいと思っている。
僕らはある意味、普通の家具屋ではない。自分としては普通にやっていても、いわゆる家具業界の中では特種な部類だと思う。
量産をする訳でもないし、下請けとして傘下にいる訳でもない。自分を信じて、こういう家具屋があればいいと思う事を素直にそして賢明に築いてきたため、できる事の範囲が広く、やりたくない事できない事もハッキリしている。全ては、自分が納得していいと思える事を行動し、余計な考えはいらない。その結果、家具職人として求められないとするなら、しょうがない。嘘を付いてまで家具を作る気なんて最初からない。

幸い、ごく一部の方かもしれないが本当に共感して頂き、忙しく仕事をさせてもらっている。
友達のように親密になってくれる方もいて、家具を作るという責任を感じながらも、素直にうれしくて仕事が終わった後に喜んでいる。
そういった瞬間に思う事がある、「お客さんとの関係が気持ちいいぐらいシンプルだなあ」と。
くどいが、ほんとにごく一部の人なのかもしれないが、家具を見に来てくれる方は、感じの良い人ばかりだ。
いろんな仕事の話しをしてくれたり、夢の話してくれたりと、お客さんから教わる事は多く、がんばらずにはいられないのだ。
感謝の気持ちは家具作りで返すしかない。ありがとう。
僕らのような作りてが多くなる事を心から祈っている。



10/13 キッチン
オーダーキッチンを作っている。今回のキッチンは新築のお宅からの依頼である。
たまたま時期が重なった。というのは、12月に現場取り付け予定のキッチンが2台ある。
もちろん、まったく別のお客さんからの注文である。

1 ステンレスシンクをアンダーに取り付けるタイプを提案させて頂いた。天板は木(ナラ材)である。シンクもそれ用に作るので木部とステンレスとの納まりのクオリティーは高い。脚のついた家具のような雰囲気を持つキッチンを希望して頂き、天板が木である事は重要なポイントであろう。
設備はビルドインIHのみで、それはお客さんからの支給品である。混合水栓はTOTOの伸びるシャワ−付きのものである。
先日現場に出向き、給水、排水、それからIH用200V電源位置を確認したので、安心である。
最初の打ち合わせをさせて頂いたのは5月。それから半年経過し、いよいよ製作に入れるような状況である。

2 カウンター付きのアイランドタイプのキッチン。どんな生活が好きか、そんな事を十分感じさせて頂いた。
夏頃から打ち合わせをさせて頂いている。キッチンもそうであるが、下駄箱や洗面ドレッサーなどトータルにお願いをして頂いている。
ブラックウォールナットが腰板となり、リビングから見えるキッチンカウンターとなる。カウンター天板は同じブラックウォールナットになる。
段差で低くなりキッチン天板はステンレス。ステンレストップは、シンクと立ち上げ、全て一体成型なので綺麗である。エンドパネルはブラックウォールナットなので、無垢材とステンレス素材との収縮の違いや、微妙な調節テクニックがないとできない構造なのである。作業面の面材は、白だ。
シナランバーに見つけ加工したものをウレタン塗装を施す。お願いしている塗装屋さんは「自分はぬし屋だ」という岩田塗装さんである。この人はすごい。本物の目白や目黒塗装もできる。ラック仕上げもできる。木の事を、すごく知っているので、僕と同じレベルで木を触って確かめながら塗装してくれるので、信頼している。だた、最近はカシューを使った作品(宇宙の絵)ばかり製作していて、仕事をしたがらない。「宮嶋君だけだよ」と言って引き受けてくれるが、展示会用の作品の話をしだすと止まらないので注意だ。大好きなおじいさんである。今回はウレタンの白塗りをお願いするが、いつか、ラック(虫から作るんだよ)仕上げをお願いしたいと思っている。
もどり、設備は、食洗キ(ミーレ)、ガスコンロ+オーブン(ハーマン)、浄水器(シーガルフォー)といったものだ。ガスコンロ+オーブンはお客さんから支給して頂いた。混合水栓はセラトレーディングのオリジナルのものだ。
、今迄用意した資料や図面を振返りながら確かめるように製作に励んでいる。

僕が一緒に仕事をする職人は、より専門的な人が多い。キッチンのステンレス天板はキッチン天板専門ではなく、ステンレス専門である。普段は業務用の巨大な冷蔵庫の扉を作ったりしている。工場に行けば、何ができるか人かはすぐわかる。ステンレスの加工専門という事だ。
塗装屋の岩田さんは、ウレタンやラッカー塗装以外の技術のいる塗りができる数少ない職人である。こういう人は、素材から学んだ技術や経験を話しだした瞬間に、ものすごく頼りがいのあるスーパーサイヤ人に変わる。やっぱり実はすごいんじゃん。活かしてよその技術って思う。



10/7 がんばっています。
オーダー家具の場合、打ち合わせを重ね、家具を作り出す時には「いよいよだ」という緊張した気分になれる。
夏頃から打ち合わせを重ねてきた家具の製作が進み、今hwbの店内と工房は賑やかである。
お客さんの家具を考えている時は正直、苦痛でもある。単純に苦痛という話ではなく、責任を果たすべく模索している段階は簡単に決断できないという事である。家具の提案は生活の提案でもある訳で、長く使える家具を作っている以上、いろんな事を考える。
ホントに考える要素は多く、納得して自信を持つ迄には相当の葛藤なしではありえないという事なのだ。
オリジナルの家具の注文も、その人仕様にサイズや座りごこち等、微妙に変更も進んで受けている。だから、作る時は良く考える。例えば今加工している部分の材料はどこのパーツのものかを必要以上に意識する。「このパーツの脚はこの長さが最高なのでしょうか?」「どちらかと言えばこっちの木目が好きだろうなあ」「この部分はなめらかに仕上げていこう」とか。
独り言をブツブツ言いながら、結果洗練されていく。
僕は独り言を言っているらしい。休みの日の事。最近オープンした近所のでかいアピタ(なんであんなに混んでるの)に出かけた。
休み気分でアピタ店内を探索していた僕、お店の内装や家具を見ればやはり気になる。向こうから歩いてきたケイコに「すごく変な人みたいだったよ〜。こわ〜。」と指摘を受けて始めて気が付いた。やばいぞオレ、、、。気をつけよう。
そんなブツブツ事も、どんな時も作り手という事で僕の中では消化できる。でもホント、いつも考えてるよ。楽しいからね。

そんなこんなで、忙しく家具作りに励んでいる。
今日、注文頂いたお客さんに「家具の製作開始は12月中旬〜」と事情を説明すると、ガッツポーズをしながら「がんばって!」と。
しばらく休みなしでがんばろうと思った。家具を集中して作っていると時間があっという間に過ぎる。
「え!?もう4時!」気分的には3時間前は朝だっちゅうにん」。「時間よとまれ!」念ずる。



10/3 納品
カップボードの納品である。
イタヤカエデで製作したカップボードは幅1800mmの高さ1500mmである。
扉を開け放し、撮影をさせて頂いた。

カップボードの手前にあるのは、イタヤのダイニングテーブル。以前製作させて頂いたものである。

テーブルは納品した時より、家具らしくなっていた。
使ってできていく細かなキズや、触る事によって磨かれていく透明感のある自然な艶が、雰囲気を作っていた。

この使い込んだできていく艶は、ホントに雰囲気が良い。
大好きである。



10/1 贈り物
本当に気持ちのこもったオーダー家具の依頼であった。トラックに積み込み中、携帯に電話を頂く。
依頼主であるTさん夫婦、「最後にもう1度、見ておきたい」
「トラックの中にある状態でいいから」と、嫁いでいく娘を見るかのように涙を浮かべ、「ありがとうね、ありがとうね」と。
依頼主の御夫婦と僕を結びつけてくれたのは、きっと今は亡き娘さんであるような気がしてならない。
4年前の話しである。散歩をしていた奥さんは偶然に工房を見つけ、訪ねてきてくれた事がある。移転前の工房は民家を無理くり改装した目立たない場所にあった。そこでまさか家具を作っているとは到底思えないような建物であった。天気のいい日であった。たまたま、窓を全開にし作業をしていた僕。普段散歩する事のないコースをたまたま歩いていた奥さん。御会いしたのはそこが始めてである。
工房を移転し、住所も聞いていた訳でもなかったので、引越しお知らせも送る事はできずじまいであった。
そして先日の話し、依頼主である奥さんと再会する。再会するには、これまたいろんな人との出会いが重なった。そしてつながり、縁あって再会する事となった。
そしてお宅に訪問し、娘さんの事を聞き、いろんな話しを聞き、いろんな時間を聞き、、、。まるで、娘さんと奥さんと旦那さんと僕とケイコとみんなで家具を考えているような気さえした。
この家具は御夫婦が使う訳ではない。大切な送りものである。
僕が家具を作るには大きな理由がある。もっと言うなら、それこそが創造の根源となっている。



10/1 オーダー家具3
納品前のソファ。
2200サイズの片アームタイプ。
今回のオーダーはクッションを背に配置して、そしてゆとりのある座は十分寝ころべるサイズとなった。



10/1 オーダー家具2
2700mmの大きなテーブル。
8人で使用できるように、脚の位置を検討した結果のデザインである。天板は大きいので、階段で9階まで搬入する。



10/1 オーダー家具1
ハードメープルのカウンター。
天板面には、テレビとコーヒーメーカーを置く設定での設計である。
オープン部にはTV機材、引出し内はソフトやコーヒーメーカーで使用する物を収納。
リビングに配置する訳ではなく、カウンターのような条件で使用するものである。椅子に座って、テレビを見れる高さであり、コーヒ−メーカーも使いやすい高さである。


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