hwb work diary 2003.4


6/25 キッチン
去年から打ち合わせをしてきたキッチンの製作に取りかかっている。
今回のキッチンはアイランドタイプ。今まで作らせてもらったキッチンの中では1番大きなサイズのワークトップである。
3700mm×900mmの大きさのステンレスのワークトップは、下地の木枠のみでも、思った以上に重量がある。
食器洗浄機やガスコンロなどの設備は、既に工房に入荷したため、原寸を確認できるため心強い。と、いっても梱包をとるのも抵抗はあるかな。
ステンレスワークトップ以外本体や引き出しなどで、白く塗装をする部分はシナのランバー合板(FC0)を使用する。
ウレタント塗装を施すため、MDFや無垢材も検討したが、シナランバーに落ち着いた。
塗装部以外の引き出し等は無垢材で製作する。無垢材は僕らにとって何の問題もなく加工できるが、対して、合板という素材は、加工中のくしゃみやイガイガ感が何とも嫌である。
僕らの出すオガ粉は、たい肥に活用してもらうため、無垢材以外のものは混ぜないようにしている。だからシナランバーなどの合板を加工している時は、集塵機で粉を集めないようにしている。
だから、粉が舞う。で、マスクをして作業をしている。なんか嫌な感じである。
FCOや低ホルムアルデヒド合板などは、一応基準値はクリアーしているものらしいが、もろ加工中にでる物質については検討されているのか疑問である。
それでも、塗装を施せば、きちんとした白い綺麗な板になる。
今回のこのキッチンの仕様は、構造上、合板の方が設計に無理が生じない点で、そうなったのである。
これも、適材といえよう。
でも、加工は厳しいなあ。無垢材は板にするだけでも、ひと仕事で手間のかかる部分が多い、それでもその加工の方が健全な感じがしてしまう。
木に携わる仕事をさせてもらっている事に改めて感謝します。



6/23 月曜日
月曜日。だから工房は休み。なので、カツキとソウタは工房に来ない。デヘッ。とっいう事で、久しぶりに工房を一人で占領し静かに道具の手入れでもしてみたり、刃物を交換してみたり、ハ材で鉛筆立てでも作ってみたり、音楽を聞きながら一人優雅に過ごしてみようと企てた。
工房に入り、少しだけ残っていた仕事を終わらせてから、道具達を手入れすることにした。
それが、間違いであった。すぐ終わる予定が結局夕方近くまでかかってしまった。また、やってしまった。
いつも仕事をしてしまう。やりだすと止まらないこの僕は、時間を意識していないととんでもない事になってしまう。
だから、普段の仕事では必要以上に時間を意識している。今日はゆとりがあるから少しだけやってみようかなって思う時程、普段以上に専念していて気が付けばヘトヘトになっている事が多い。集中したらこうなるからしょうがないか。
でも、晩御飯を食べた後の夜の工房もいいもんだ。窓を開ければ、涼しい風も入ってくる。修行させてもらっていた時も、夜の涼しい風が好きで、刃物を研ぎながら静かに夜工房を楽しんだものだった。
音楽は好きだ。人に語る程の知識はないが、単純に好きである。同じ曲を何回も聞くタイプである。特に古いものの音が好きで、この曲のギターの音が好きだとか、この曲の包まれるような反響音が好きだとか、この雰囲気が好きだとか、、、。だからアーティストじゃなく曲を選ぶ。もっというならこの曲はライブ版の方がいいとか、、、。とにかく、音楽はいいもんだ。
話しは戻り、刃物を研いでいる時思う事がある。音楽がいらない、と。
刃物と砥石がすれる音が、自分が奏でている音じゃなく、僕がその音に合わせ追っかけているような錯角に落ち入る。落ちる。
砥石と刃物がだんだん吸付いていき、磁石でひっぱれれているような感覚になる。砥石を往復する刃物の先端を見、そして砥石面の水が一定のリズムで反射し、その水を見る。だんだん刃物が研ぎあがるにつれ、その水は黒くなっていく。
研ぎあがった刃物は、今の自分、そしてこれから先の自分を映してくれる。
夜の工房の音楽は静である。



6/22 日曜日
僕らの工房は月曜日を休みとしている。お店がオープンしたら月曜日をお店の定休日にするからだ。
ここ数カ月、日曜日はお店作りをしている。普段の家具製作とは少し違った時間が流れる。
1年前に今の工房に移転し、お店作りをはじめた。あっという間に時間は流れ、また、この季節になったのには驚く。
時間はかかったものの、僕らのお店作りにも自信が出てきた。1年経過し思う事は、僕らのお店作りは時間が問題でなく、経過がものすごく重要なんだという事だ。結果、同じ物ができたとしても、ひとつひとつ納得して出した結果では自信が違う。
迷って迷って、出口のない状況はどんな時だって訪れる。その時僕は、例え出口がなかったとしても、模索するだろう。
答えを出す事が、ゴールではない。
明るすぎると思い、窓をふさぎ壁を作った。そして暗すぎると思い、壁を思いっきり壊した。その時、壁を壊した僕はものすごく、迷いがなく晴々した心境であった。「最初から気が付けよなあ」って、笑えた。
今日は、お店の外壁(トタン)のペンキ塗りだ。ペンキの定着をよくするために、バフをする。1面のバフをしたところで雨がポツリと降ってきた。ペンキ塗りは中止だ。タワー(足場)に登ったカツキとソウタを見ながら思った、「家具屋じゃないなあ、、、。」と。僕らは家具屋だが、その前に物作りの好きな作り手である。普段とは違った時間が流れるよう、そしてそれが僕らのペースとなり、普段となるよう願っている。
僕らはゴールを目指しているのではない、毎日をきちんと納得して過ごす大人でありたい。



6/21 撮影
2月に製作させてもらった、クルミやメープルの壁や階段を撮影に。
宇野さんの設計した守山の家2である。「モダンリビングの取材と撮影があるから、宮嶋くん達も撮影に来る?」と誘ってくれた宇野さんは、取材中もいつもと同じ宇野さんだった。
左 キッチンのクルミ材。 無垢材の枠のない扉や引き出しが、たまらなく綺麗である。木目を縦に接ぎ合わせた、クルミ材は大きなキッチンカウンターに程よく存在していた。
中央 ハードメープルの階段。細かな部分まで意識をして、設計しているのが僕には分る。
右 メープルの壁。900mm幅のパネルが並ぶ。
守山の家2は「モダンリビング」8月号に紹介されるそうだ。詳しくは宇野さんのサイトへ



6/19 ただい
帰ってきた名古屋に。新幹線に乗ったのは久しぶりだった。
ライフスタイルショーはどうだったかというと、なんだか理由はわからないが気持ち良い2日間であった。
地元の陶器メーカー(工房)の器がすごく気になった。今度、工房に見学しに行く事になった。もちろん、僕らの工房にも来てもらおう。物作りをしている人とは工房で立ったままで話すのが1番いい。
視点は違うものの、本気で惚れ込んでその物の事を話しているかなんかすぐ分る。

多少、時間ができたので青山にある家具屋に出かけた。どうしても気になったお店があったのだ。
そこのお店は好き。特に最上階のベットルームの提案にはおどろいたなあ。名古屋に帰る最後に見た、東京の1番気持ちの良いものだった。なんだかうれしくて、わくわくしたよ。



6/16 出張だ
明日から3日間出張である。東京で開催されるライフスタイルショーにいく。出展する側ではない。
インテリアに関係する多くのものが出展される。
僕らのお店で、販売できそうなデザイン、質のものを実際に触って検討できればと思っている。
こういった大きなショーでは冷静さが大事でショウ、、、。
共感できる物があればいいなあ。
僕らのお店で販売する以上は、納得して自信を持てたもの意外はありえないので、しっかり見ないとね。



6/15 段々と
今週は階段棚の製作に集中。
ハードメープルの箱を積み重ねて、階段棚となる。
飾り棚として収納として、そして階段としての使用目的がある。
既存のはしごは棚の最下段に封じ込むように収納。
2段目は抽き出し収納。2段4列の奥行きのある抽き出し収納となる。
この段の本体は奥行き800mmある。すぐ上の段は奥行き450mmなので、抽き出し本体部は手前に突き出ているため、トップはディスプレースペースとなる。
3段目、5段目は上開きの1枚扉にて収納となる。ハードメープルの木目は横に1枚の長い扉となる。もちろんディスプレーした場合、この扉が背景となり、ガラスなどの小物や植物を際立たせてくれると思っている。
4段目、6段目はオープンの収納だ。奥行きがあるため背板はなくし、内部が暗くこもった空気にならないようにした。

本体はだいたい形になった。これからが家具職人の腕の見せ所、抽き出しや扉にかかる。



6/14 打ち合わせ
宇野さんと久しぶりに会う。久しぶりいってもそうでもないか。
宇野さんからの依頼で座卓の打ち合わせに出かける。
今度リフォームをされるそうだ。お客夫婦と宇野さんと僕とで打ち合わせをする。
スケール(メジャー、コンベックス、巻き尺と職人はいろんな言い方をしている)にてリビングに家具を空想し、空間と家具とのバランスを検討する。2800mmの長い座卓か1400mmの座卓2台組み合わせか、、、。搬入と組み合わせの機能面から1400mmのものに決定。あとの細かいバランスは任せてもらい、価格ともバランスのよい家具になるよう材料ともにしばらく検討してみようと思う。
ロシアに住んでいた事のあるお客さん夫婦。ロシアにて購入した家具の改造を依頼された。
デンマーク製のその家具はボトルを収納できるチェストである。いかにいもデンマークデザインのその家具に、僕らは興味深々。
工房に持ち帰り、研究。どうやって作られているか、構造を探るのが非常におもしろい。材料の使い方、着色の仕方、扉、抽き出し、そして本体を支える脚部の細かな寸法と、誰が作った家具かはわからないが、作られた行程や削られた材料をいろいろ想像していくのはホントにおもしろい。
しかし、この材料はいったいなんなんだろう。僕らが見なれているウォールナットに似ているが何かが違う、、、。う〜ん。



6/9 車で納品
今日は車で納品だ。クルミ材で作らせてもらった、学習机。カルナバや蜜ロウなどのワックスで自然の艶がでたクルミ材はきれいである。

微妙な仕上がりの違いは、このワックスを活かした仕上げによるものだ。

無垢材なので、できるだけ素材感は出していきたいからね。



6/6 下駄箱
御近所の方から注文頂いた作り付けの下駄箱。
靴がたくさん収納ができる。(内部の棚板は14枚)
メープルの下駄箱は玄関をより明るくした。

歩いて家具を運ぶか迷った程、御近所である。
納品時は、たくさんの人がいて少し照れくささもあったが、それ以上にうれしかった。
取り付けの時に、必要な道具を工房へ歩いて取りに行きながら、こんな事を思った。
近所の家具屋なんだだなあって。



6/5 お店のこと
hwbのお店作りに取りかかってもうすぐ1年たつ。なんでこんなに時間がかかるのか、、。現実が押し迫る。
正直、こんなに時間がかかるとは思っていなかった。お店作りに時間をさく事がなかなかできない現状がある事は確かだが、それ以外の理由の方が大きい。結局は僕らが納得できるお店になるまでは、家具が並ぶまで奮闘するのか。
僕らはやっぱり自分達の手をそして時間を使っての物作りしかできない。
オープンするまでに手を使い作るものは、まだまだ山程ある。それらを一つづつ納得するまで考えていく事が、僕らhwbの家具作りであり、作り手の愉しみである。僕ら自信が納得しながらそして楽しみながらお店をそして家具を作っていく事こそが、何より大切にしていきたい事だなあ。
自信を持ってみんなをお店に招待できる日を、僕らは本当に楽しみにしている。
それが、今の僕らの励みであり希望である。



6/4 おっと
6月だ。今月はものすごく忙しい。去年から打ち合わせをしてきたキッチンの仕事に取りかかる。リビングキッチンを改装されるお宅のキッチンを含めた家具の製作をさせてもらう。
キッチンはアイランドタイプ。食器洗浄機、ガスコンロをビルドイン。
アイランドタイプなので、調理スペースの向かい側はカウンターとなる。キッチン本体はそのままダイニングテーブルにつながる。
だから全長6メーターの家具となる訳だ。キッチン天板はステンレス。下部収納ボックスのサイズとステンレスワークトップのサイズがピッタリ同じサイズでないと綺麗にまとまらない。逃げがないというか、逃げないというか、、、。
下部収納は抽き出しや棚板やバスケットやトレーなど。それらは、白く艶のある仕上げにしていく。キッチン側は白。トップはステンレス。それらの両端はウォールナットのエンドパネルでおさえる。カウンター側の腰壁は現場でウォールナットを貼る。
キッチン本体はこんな感じである。
で、ダイニングテーブルにはアームチェアを6脚。カウンターチェア2脚(これらはウォールナット)。リビングにはソファを2台+コナー1台(このソファはオープンしたらお店にも並ばせるから楽しみにしてね)。ソファにはローテーブル(これはナラ材)。
以上が今回製作させてもらうhwbの家具達である。

それから、違うお客さんからの注文でリビングに階段の機能も果たす壁面飾り棚をハードメープルなどで製作する。現場で連結して大きな家具になる。エレベーターや階段、廊下などの採寸をし、搬入できるサイズで作るのだ。
このお客さんは植物を育てるのが好きだ。育てるのが好きだから、植物がどんどん増えていくそうだ。
で、この家具が完成し部屋に納まると、ガラスメーカーの社長であるお客さんは植物とオリジナルのガラス製フラワーベースや食器を並ばせたいという。
仕事を楽しんでがんばっているこの女社長さんはガラスと植物が好きでたまらないという。だから、そんな時間を大切にしたいという。でも今まで仕事一筋で、なかなかゆっくり家にいる事ができなかったそうだ。「これからどれだけの間、世間が必要として下さるかは分らないが、必要とされる間は精一杯仕事をさせてもらう」といって、打ち合わせ中の図面を眺めていた。なんか感動した。
僕らが作るこの家具と植物が、プライベートの時間をゆっくり過ごせるように心をこめて作らせてもらう。
さあ、今月は仕事を一生懸命させてもらうぞ。


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